ある作家が読者を魅了する。しかしそこには様々な魅了のパターンがある。まず最初の一ページから読者を魅きつけ、有無も言わせずに魅了してしまうタイプ。第二は、読み進むにつれて、じわじわと、しかし確実に読者をその世界にひきずりこんで行くタイプ。そして最後に、読み終えて何ヶ月も何年もたってから突然、まるで後髪を摑むように読者を引き戻して行くタイプの作家いる。僕にとってスコット・フィッツジェラルドがそういう作家であった。他には誰もいない。彼だけがそのように僕を捉えた。と僕の大好きな作家村上春樹が書いていた。ほとんど特定の作家の作品しか読まないので、何か他の作家を探していたのでスコット・フィッツジェラルドの作品を読んでみた。ロスト・ジェネレーションの作家で、要はヘミングウェイの世代だ。確かに『読み終えて何ヶ月も何年もたってから』って感じであまりパッとしなかった。まず時代背景が解らないと理解しずらいし、自分なりに昔の映画のナレーション風に想像しながら読んでみたりもしたし、代表作であるグレート・ギャッツビーを読み映画も観てみたがダメだった。いつか『後髪を摑むように読者を引き戻して行く』ことを願っている。
それよりも僕としては村上春樹の短編が特に好きだ。例えば沈黙や七番目の男とか何回も読んだ。それから我らの時代のフォークロア。とにかく深いです。その中でもハナレイ・ベイは一番好きだ。自分がサーファーだからとか、鮫が怖いとか様々な感情移入のきっかけがあるのだけれど、何に最も感情移入しているのか自分でも解らなく、しかし至る所でジーンとくるのだ。
内容はハナレイ・ベイでサーファーの息子を亡くした母の人生を描いた物語だ。ハナレイ・ベイのあるカウアイ島は法律により高い建物を建てる事はできなく、本来のハワイの大自然が広がっている。そして僕の大好きなサーファーBRUCE IRONSのホームポイントでもある。
そんなハナレイ・ベイで鮫に噛まれ死んだ息子をひきとりに行った時、付き添い警察官がこういう『ここカウアイ島の自然はまことに美しいものですが、同時に時として荒々しく、致命的なものとなります。私たちはそういう可能性とともに、ここで生活しています。あなたにとっては本当につらい体験だと思いますが、できることならそう考えてみてください。息子さんは大義や怒りや憎しみなんかとは無縁に、環境の中に戻っていったのだと』
これが話の中心にあるのだと思うのだけれど、どんな理由で心を動かされるのか本当に解らなく、ろくでもないサーファーが片足の息子の幽霊を見た時、そして最後のハナレイ・ベイという文章に結ばれた時とても感動する。打ち寄せる波の音と、アイアン・ツリーのそよぎのことを考える。貿易風に流される雲、大きく羽を広げて空を舞うアルバトロス。そんな風景を思いめぐらせる。いつか必ずそれを確かめに行こうと思う。ハナレイ・ベイ。
Date Posted 3/1/2008
weird writing by GHOST WRITER